家を建てたり、購入する際、重要視したい「耐震性」。耐震とは、地震に耐えるための住まいの性能であり、地震大国である日本においては「大地震への備え」でもあるのです。日本では近年地震が増加しており、震度6強以上の大地震も、10年に一度のペースで発生しています。安心して暮らすには地震に強い家に住みたいですよね。
家づくりの条件として地震に対する強さを重視される方が多いのですが、一方で、地震の際の強さが建築にどう作用するかは、以前は一般消費者にわかりにくい状態でした。それを一目でわかる住宅性能の表示基準として示されたのが「耐震等級」です。
耐震性能は、地震などの自然災害に対する住宅の耐久性を示す重要な要素。「耐震等級」は、その住宅の地震への耐性を表す指標であり、これを理解することは家を建てる際や購入する際にとても大切です。
今回は、この「耐震等級」を中心に、耐震性の高い家づくりについてご紹介していきます!
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耐震等級とは
耐震等級とは冒頭でもお伝えした通り、地震に対する建物の強さ(耐震性)を表す指標です。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき地震があった際に建物がどのぐらい耐えられるのか、地震に強い建物かどうかなどを判断しています。
耐震等級は、建物の耐震性に応じて3つのランクに分けられています。等級は数字が大きければ大きいほど耐震性が高いと評価され、等級3が最高等級となります。
耐震等級の目的
住宅の耐震性能の指標には、大きく分けて「耐震基準」と「耐震等級」が存在します。「耐震基準」が建物内の人命を守る基準であるのに対し、「耐震等級」は建物自体を守ることを目的として定められた基準です。建売住宅などの購入の際には耐震基準と耐震等級の違いを理解し、耐震基準に適合していない建物を購入しないように気を付けなくてはなりません。
耐震基準は、一定の強さの地震に耐えられるよう、建築基準法が定める最低減クリアすべき指標です。2000年6月1日に施行された現行の建築基準法の耐震基準に沿って建てられた家は耐震等級1に相当します。
一方、耐震等級とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が定める、住宅の品質についての基準の一つ。住宅購入の際、目視では分かりにくい耐震性能を、等級1~3の3つのランクで示します。耐震等級の取得はあくまでも任意のものであり、指定の機関で審査を受け「住宅性能評価書」を取得することによってのみ認定されます。
耐震基準
- 建築基準法で定められている最低限守るべき基準
- 家を建てるときには必ず守らなければならない(任意ではない)
- 耐震等級1に相当する
耐震等級
- 住宅の品質を表す基準
- 取得は任意
- 認定を受けるためには審査を受け合格する必要がある
耐震等級の評価基準
耐震性能は等級1から等級3まで3段階に分けて表されます。等級1は、建築基準法レベルの耐震性能を満たす水準で、災害後は建替えや住替えが必要となることが多いです。等級2は等級1の1.25倍、等級3は等級1の1.5倍の強さがあると定義されます。一般的に等級が上がるほど柱や梁が太くなり、窓などの開口部が小さくなるなど制約が出やすくなります。
耐震等級ごとの違い
耐震性能は等級1から等級3まで3段階に分けて表されます。耐震等級の3つの区分は、どのような基準をもとに設けられたものなのでしょうか。ここでは、耐震等級ごとに、その耐震性能を見ていきましょう。
耐震等級1
耐震等級1は、等級の中でもっとも低いランクで、建築基準法で定められている最低限の耐震性能を備えています。耐震等級1は、震度6~7の地震にも1度は耐えられる耐震性ですが、即時倒壊や崩壊はしないものの、その後大規模な修繕や住み替えが必要になると想定されます。
耐震等級2
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の性能・耐震強度の水準です。震度6~7の地震にも耐えられる耐震性があり、その後も一部の補修を行えば生活できる可能性が高いです。
耐震等級2に分類された建物は、長期優良住宅として認定。長期優良住宅とは、「長期に渡り良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅」のことです。また、地震や台風といった災害時に避難場所となるような体育館や学校、地域住民の健康を守るために重要な病院などは、耐震等級2以上の強度を持つことが必須です。
耐震等級3
耐震等級3は耐震等級の中でも高いランクに位置します。耐震等級1と比較した場合に1.5倍の耐震性があり、震度6~7の地震にも耐えられます。また、その後も軽微な修繕のみで暮らせると想定されており、高い耐震性を備えていることが特徴です。
極めて高い耐震性を有した建物であり、災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署・警察署は、多くが耐震等級3で建設されています。震度7の揺れが、立て続けに2回起こった熊本地震では、1度目は耐えたが2度目の地震で倒壊した住宅も多数あった中、等級3の住宅は2度の震度7に耐えていたことが、専門家の調査によって明らかになっています。
耐震等級3と耐震等級3相当の違い
「耐震等級3相当」という表現も目にしますが、「相当」のありなしで何が違うのでしょうか?
耐震等級3相当と耐震等級3の主な違いは、公的な認定の有無にあります。耐震等級3は国や自治体の認定を受けた建物で、厳しい基準に基づいて設計・建築されていますが、耐震等級3相当の建物は、公的な認定はないものの、実質的には耐震等級3と同等の性能を持っているとされます。
同等の耐震性であれば「耐震等級3相当」でも問題ないと思う方もいると思いますが、本当に耐震等級3を取得できているか確認できない点や地震保険の割引を受けられないなどデメリットもありますので、注意が必要です。
耐震等級を高めるためのポイント
住宅の耐震等級を高めるためには、いくつかのポイントがあります。ここでは、耐震等級を高くするためのポイントを4つ解説します。
建物を軽くする
建物は軽量である方が耐震性は高いとされます。建物の重さが軽いほうが、耐震性は高く、建物が重いと地震の際に揺れ幅が大きくなってしまい、建物へのダメージが大きくなります。建物の重心が高ければ揺れはさらに増大します。対して、建物が軽ければ地震が起こっても揺れ幅が小さくなるため、地震の揺れによる影響を受けにくくなります。
建物の重さは、木造・鉄骨・鉄筋コンクリートなどの構造や、使用する資材の種類によって変わります。例えば、重い瓦屋根を軽量の屋根材に葺き替えることで、被災時の倒壊リスクが下がると言われています。
耐力壁をバランス良く配置する
耐力壁とは、地震や風などで受ける横からの力に抵抗する壁のことです。耐力壁が多ければ、その分、耐震性は高まるため耐震等級を高めるためには大切な部分です。
ただ多ければいいというわけでなく、バランスを考慮した配置が重要。一部にだけ耐力壁が集中しているような、バランスが悪い建物は逆に耐震性が低くなることもあります。
1階と2階の耐力壁の位置を揃えたり、四隅を支えるようにバランスよく配置したりと、家全体の耐震性を考慮した配置が大切です。
床・基礎の耐震補強を行う
壁だけでなく床の耐震性も大切です。壁と床はつながっているため、壁が頑丈でも土台である床が破損・崩壊すれば、地震の揺れには耐えられません。床に耐震性能があれば、耐力壁が受けた揺れを受け流せるためダメージを抑えられます。
また、住宅を支える基礎も耐震性を高める上では重要です。点で支える「布基礎」よりも、面で支える「ベタ基礎」の方が耐震性が高いとされます。
耐震金物で接合部を強化する
耐震金物とは、基礎と柱、壁と梁などの接合部に取り付ける金物のこと。地震の揺れによる接合部のゆるみや抜けを防ぎ耐震性を向上させます。2000年以降に建てられた木造住宅では、柱と土台をつなぐホールダウン金物の設置が義務付けられています。
耐震金物も耐力壁同様、家全体の耐震性を考慮し、バランスよく設置することが大切です。
耐震等級が高い家を建てるメリット・デメリット
耐震等級が高い家にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここでは、耐震等級が高い家を建てるメリットとデメリットを解説します。
メリットとデメリットを理解した上で、自身にとって最適な耐震等級を選択することが重要です。家族の安全性や長い目で見た住宅の価値を考慮しながら、各等級の特性を比較検討しましょう。
メリット
■安全につながる
まず第一に、地震の際に家族の安全を守ることができる点は大きな利点です。地震に対する耐性が高いため、被害を最小限に食い止めることが可能です。これは家族の安全を守るだけでなく、住宅自体の被害を軽減するため、修復や補修コストが抑えられるという利点にもつながります。また、高い耐震性能は長期的な視点で見た際に、住宅の価値を維持しやすくする要因にもなります。
■地震保険料が安くなる
次に、地震保険の料金が低くなる可能性があります。一般的に、地震に強い建物は地震保険の料金が割引される傾向があります。そのため、長い目で見た際に、地震のリスクに対する経済的な負担を軽減できるという利点も考えられます。
過去の大地震の際にも耐震等級3の家屋は被害が少なく、その経験から地震保険の割引率も増加しています。
■低金利でローンを借り入れできる(フラット35の場合)
耐震性の高い住宅はリーズナブルな条件で融資を受けることができる可能性があり、住宅購入に伴う経済的な負担を軽減することができます。
フラット35を利用する際に、条件を満たしてれば「フラット35S」の利用が可能となります。フラット35Sでは耐震等級に応じて借入金額の金利が引き下げられるため、通常のフラット35よりも、お得にローンが組めます。
デメリット
■コストがかかる
高い耐震等級の住宅は、建築コストが通常よりも高くなるため、初期投資が大きくなるという点が挙げられます。設計や建設において厳しい基準をクリアする必要があるため、専門的な知識や技術を持つ建築士や施工業者との連携が不可欠です。また、耐震等級3を取得するためには第三者機関による調査が必須のため、全体の工期が長くなるケースもあります。
ただし、初期費用や工期が増えたとしても、災害時の修繕費用軽減や、資産価値を維持しやすいなどのメリットもあるため、長い目で見れば損になるわけではありません。
■希望の間取りが実現できない場合がある
耐震等級を満たすためには、耐力壁の量や配置、柱の位置などのバランスが重要なため、希望通りの間取りが作れない可能性があります。例えば、LDKなど広くしたい空間に耐力壁を入れなければならないケースなどが考えられます。
ただし、設計力の高いハウスメーカーや工務店なら、暮らし方の希望をかなえた上で耐震性も両立するプランを作成してくれますので、業者選びも大切です。
■必ず倒壊や破損を防げるわけではない
耐震等級3を取得したからといって、どんな地震に対しても必ず倒壊や破損を防げるわけではないということも理解しておきましょう。
もちろん、耐震等級3は最大限の地震への備えであることには変わりありませんが、自然災害は予想外が起こりうるものであり、どんな備えであっても100%はないということも頭に入れておく必要があります。
耐震等級の注意点
耐震等級の評価を受ける際には注意したいポイントがあります。ここでは、注文住宅と建売住宅に分けて注意点を紹介します。
注文住宅を建てる場合の注意点
注文住宅を建てる際には、耐震等級を考慮することが重要です。まずは、信頼できる工務店や建築会社を選びから。地域の土地条件や建築基準を理解している工務店や建築会社であれば、適切な耐震性能を確保するための提案をしてくれます。
注文住宅を建てる場合、耐震等級をどのランクにするのか施主が自由に希望できるため耐震等級についての要望がある場合には、最初の時点でしっかりと伝えておきましょう。何も希望を出さない場合は、工務店や建築会社が独自に定めている基準で設計・建築される場合が多いです。
しっかりと工務店や建築会社とコミュニケーションを取りながら、安全で快適な住まいづくりを進めましょう。
建売住宅を選ぶ場合の注意点
建売住宅を選ぶ際には、耐震等級がわからないケースがあるため注意が必要です。耐震等級がわからないときは、築年数などをもとにして耐震性をチェックするとよいでしょう。新耐震基準は1981年6月1日に定められているので、これ以降に建てられた建物は少なくとも耐震等級1の強度があります。
また、建売住宅のメーカーや施工会社の信頼性も重要なポイントです。高い耐震性能を誇る住宅を提供しているか、過去の実績や評判をリサーチすることで、安心して住まいを選ぶことができます。さらに、耐震性能に関する情報は建築会社や不動産業者から提供される場合が多いため、質問を惜しまずに行い、自分のニーズに最適な選択肢を見つけることが大切です。
建売住宅を選ぶ際には、耐震性能についても十分な検討を行い、安全で快適な住まいを手に入れましょう。
まとめ
耐震等級とは、住宅の地震への耐震性を示す重要な指標です。家を建てる際や購入する際に、その住宅の耐震性能を把握することは非常に重要です。
法律上は等級1、すなわち建築基準法を守ればよく、等級2、3はあくまで任意の基準ですが、安心して暮らせる住まいのためには、最高等級の耐震等級3の家づくりをおすすめします。
カスケの家では、耐久等級3が標準仕様、設計士が耐震等級3を意識したプランニングを心がけています。そのため、許容応力度計算で安全性を確認する際に、間取りの変更がほとんどありません。
また、地震に強い家づくりを標準とし、耐久性に自信があるからこその初期保証20年サポートなどアフターフォローにも力を入れていますので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。