玄関ドアを開けてすぐの床、いろんな選択肢がございます。私の家はモルタルにしましたが、後悔していません。ただし、お客様におすすめする時は結構、慎重にご説明させていただいて、採用させていただきます。今回はそんな玄関の仕上げ材としてモルタルを使う際の注意点についてご紹介しようと思います。当然、メリットもあればデメリットもございます。後悔しないようお手伝いが出来ればと思います。
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玄関モルタル仕上げとは
モルタルとはセメントに水と砂を混ぜて練ったものです。コンクリートと似てますが、コンクリートはモルタルの原料に加えて粗骨材といって、石が入ります。玄関モルタル仕上げというと、床?壁?…えっ、もしかして天井?…となりますが、今回は床をモルタル仕上げにした場合に絞り書いていこうと思います。
多くの家庭で見受けられる玄関モルタルの後悔点
家は多くの方にとって一生で一番高額な買い物です。後悔したくありませんね。どんな材料もメリットデメリットがございますので、玄関モルタルの後悔点についてご紹介いたします。
ひび割れとその原因
コンクリートと同様にモルタルもひび割れます。タイルも目立ちませんが、目地部がひび割れます。ある程度仕方がないものとして、ご了承いただいた方で、それも含めて楽しめる方が採用するべきかと思います。ひび割れ防止用の繊維等もありますが、やはりひび割れました。ひび割れが汚いとか思われる方は採用はしない方が良いと思います。ほとんどの原因は乾燥による収縮です、自然です。
汚れやすさとメンテナンス
滑り防止の為、表面がある程度ザラザラする仕上げにしますので、ほこりは溜まりやすいです。タイルなども同様です。基本的には掃き掃除で良いです。
引っかかって少し掃きにくいですが、雨の日、滑るほうが、ストレスですし、危ないです。ある程度、経年すると塗装をするのも違った表情になり楽しめると思います。
シミになりやすい
シミも付きます。ザラついて、多孔質な材料であれば、ある程度仕方がないかと思います。洗剤等で落ちる場合もありますが、なかなか落ちません。
私の家は、山の中に建っていて赤土なのですが、畑作業をして帰ってくると靴の裏に赤土がモルタル土間についてしまいます。固まると掃いても全くはけないのですが、そういった汚れは、水をたっぷり含んだ雑巾で拭き取れば落ちます。少し話が脱線しますが、建築業をしていると、良く分からない汚れが、現場でついていることが結構あります。その場合、なるべくリスクの少ないものから試していきます。まずは息で吹いてみて、次は触ってみて、次は水で、それでも駄目なら洗剤を薄めてという風に段階を踏んですると、失敗が少なく、これも後悔しにくくなる一つの方法です。
ほこりが目立つ
ほこりは目立ちます。玄関土間はカスケホームでは1階床から150㎜下に位置します。重力の関係でほこりは溜まりやすいでです。黒いタイルの方が目立つかなと思います。ただ、シンプルな模様のない表面なので、そういう理由で目立つかなと思います。対策は、ほうきを置くこと。ほうきは、目立たない位置に置けるように計画しましょう。
冬の寒さ問題と断熱性
これは誤解かなと思います。モルタルやコンクリートは熱が伝わりやすいというのは事実ですが、よく玄関に使われるタイルや石もたいした差はありません。イメージ的に冷たいイメージがありそれが寒いのではないかという心配に繋がってるのかと思います。見た目に寒いから嫌という方はそもそもモルタルは候補にあがりません。それも少し後悔につながるかなと思います。カスケホームは玄関モルタルの採用は割と多いですが、冷たいイメージで使ってるケースはあまりないです。そのもののみを見て、イメージを持つのは、デザインの可能性をつぶしますので、全体を見て決めるのがポイントです。
質素で安っぽくなる
質素で安っぽくなる材料は、デザイン的には割と使いやすい材料です。主張が少なく背景にしやすい材料になります。主張させたい素材を目立たせる材料です。玄関は何か飾りませんか?家族写真、観葉植物、絵画、モダンアート、造作の下駄箱、間接照明、壁にはるタイル、こういったものの方が主張させたいですよね。それに合う床材を選んでいるに過ぎないんです。タイルや石が悪いとも思いませんが、モルタルもその候補に入れて、全体を見たときに質素で安っぽいと思えば、そうなんでしょうね。不採用です。全体で考えないと後悔します。ステーキ、寿司、フォアグラ、キャビア、一つ一つ食べれば一流の味でも全部合わせて食べたら、おいしくないのではと思います。全体のバランスを見る。この辺を設計士にリードさせていただけたら、後悔しない家に近づくと思います。
モルタル玄関仕上げのメリットと魅力
モルタル玄関仕上げは、シンプルで飽きの来ない主張しない他を際立たせる仕上げです。有田焼のようなきれいに作られた陶器より、私は備前焼が好きです。少し不完全な造形に暖かさを感じ、職人の温もりを感じます。「モルタル 歴史」とグーグルで調べてみると9000年前にコンクリートで出来ている物が確認されているそうです。モルタルもコンクリートもセメントを使った材料、かなり歴史のある材料なんですね。モダンな建物に使っているイメージが強いですが、なかなか古典的な材料ですね。
コストパフォーマンスの高さ(価格が安い)
「安い」だけで、中と外を繋ぐ大事な場所の材料を決めるのはそもそも、根拠不足です。とにかく安い家を建てたい方以外、後悔する場合が多いでしょう。内装の壁や床と違い、数㎡の場所です。大差はでません。コンセプトに合うものを選びましょう。
ここでいう「コスト」は金額ですが「パフォーマンス」とは何でしょう?デザイン、それ以外は、歩きやすさや滑りにくさ、段差の分かりやすさ、それから、直しやすさなどのメンテナンス性がありますね。外用で滑りやすいタイルとかあまりありません。段差も極端に白いものを選ばなければ大丈夫です。
割と費用は気にせず、デザインで選ばれても良いと思います。
デザイン性と自由度
モルタルは塗り材なので自由度は高いですが、金鏝で、模様を入れることも、色湖を入れて、カラーモルタルなども出来ますが、カスケの家ではシンプルに、素材の本来の質感を楽しむデザインをしています。またタイルは300㎜×300㎜などでタイルの大きさに合わせてポーチの出幅等を決めた方が、きれいに見えやすいですが、モルタルは自由なサイズで決めてもきれいです。
モルタル玄関仕上げの費用相場
費用相場は、広さとか容積とか、その時の情勢により変わるので、この場であえて出しません。
前述のとおり、あまりお金を気にして決めていただきたくない部分です。
モルタル玄関仕上げのデメリット
ひび割れが起こりやすい
ひび割れは起こります。乾燥収縮のせいですが、塗ってから1週間ほどで出ることもあります。許容いただける方でないとおすすめはしていません。ひび割れは、駄目なものと思う方には良さを分かってもらうのは難しいです。と言うとじゃあひび割れは良いものかと、二極化の思考になると、ひび割れは悪いものになるでしょうね。私もあえて、蜘蛛の巣上にひび割れをさせようとは思いません。きれいに仕上げて、結果出てきた、ヘアークラック(0.5㎜以下のひび割れ)程度であれば、自然なので良いと判断します。逆にコンクリート調の壁紙とか、ありますが、貼った時は少し離れれば、本物に見えますが、はがれると、下の石膏ボードが見えてコンクリートではありえない不自然な格好になってしまいます。自然な劣化は良しとしないと色々気になって、家なんか建てなければ、良かったと後悔しそうです。
色ムラが出やすい
基本グレーですね。モルタルは鏝で押さえていきます。これが職人技で、押さえすぎたところは黒くなっていきます。一発勝負で、やりますから、多少出てしまいますね。手作りの品質が私は好きです。職人がする仕上げには、その職人の癖がでます。モルタル仕上げはすごく癖が分かりやすい工種でしょうね。逆に言うと工業製品を求める方には向いていません。なかなか、現場で作業する建築で工場で作った精度は難しいですよ。
断熱性が低い
触ってヒヤッとする材料は断熱性が低いです。モルタルは断熱性が低いですが、前述のとおり他材料も大差はないです。弊社では基礎の外周部に押出法ポリスチレンフォームを施工しています。断熱は熱を断つということです。建物下(基礎下)の土部分の温度は冬14度、夏26度くらいです。冬は外気より暖かく、夏は外気より涼しいため、あまり熱を断つ必要はないです。そのため建物の外周部にのみ断熱材を施工すれば十分です。基礎断熱です。イメージでは床下は寒いですよね。床下を通気しなくてはいけない工法の床断熱であれば、イメージ通り、寒いです。基礎断熱であれば、外気に比べて夏涼しく、冬暖かいです。ですので、理解して断熱すれば、問題ありません。
後悔から学ぶ!玄関モルタル化の注意点
適正な施工方法と業者の選び方
最低限の実績のある職人を選ぶことが大事ですが、「適正な施工法と業者の選び方」このワードの答えを求めてらっしゃる方には、恐らくモルタル仕上げは向いてないかと思います。ガラスのような均一な厚み水平面、͡むらのなさは求めれません。
素材選びと間取りの考慮
素材としてモルタル仕上げは、スタイリッシュ、シンプルなのですが、素朴な印象もあると考えています。間取りはモルタル仕上げをしたいからそれに合う間取りをするというのは、お勧めしませんが、狭めの細長い空間に使う方が私は好きです。
玄関モルタル仕上げ成功の秘訣
家全体のデザインとの調和
調和とかバランスが大事でしょうね。素材一つなんですけど、組み合わせによれば、結構チープに見える材料です。チープを活かすのも良いですし、モルタルの持つすっきりした感じを活かすのも良いと思います。デザインはバランスが大事だと考えますので、どんな空間にしたいかというのをイメージして設計士に伝え適切な材料を選べばいいと考えます。
耐久性と将来性を考えた素材選び
モルタルは補修がしやすく、器用な人であれば塗り替えも容易です。割れがひどくなったりしたら、30~50㎜程、ハツリとって、自分で塗ってもいいでしょうね。
モルタル代替案:玄関土間に使える他の素材との比較
タイルの可能性・メリットデメリット
玄関土間にタイルが採用されてる家は、私の感覚では90%以上だと思います。色味も多くあり、どんなスタイルでも合わせやすく、シェアが多いので質の良い安価な商材も多いと思います。施工時タイル下の川砂等との間に空間があると割れます。が比較的強く信頼のできる材料の一つです。滑りにくい材料が良いですね。後、白すぎるタイルは汚れやすい事と、反射すると、段差が見えなくなり、危ないです。日当たりのいい所はやめておいた方が良いですね。黒は黒でほこりが良く目立ちます。グレーがおすすめです。デザインテイストによっては、茶系統もいいかなと思います。
コンクリートのメリットデメリット
砂利を含んでるのでモルタルより厚めに塗る必要があるのですが、少しひび割れにくいです。が、やはりひび割れます。コンクリートは、駐車場等、強度が必要なところに採用するケースが多いです。玄関は、人が通るだけですので、モルタルの方が採用されるケースが多いです。モルタルの方が、粒度が細かいため、滑らかに仕上げやすいです。
天然石のメリットデメリット
天然の色や模様は一つ一つ違います。本物の質感がやはり良いですね。重厚感のある、デザインがやりやすいです。御影石や大理石、大谷石など、広い玄関に敷き詰めたいですね。デメリットは、石種によってはメンテナンスが必要です。シミやカビが発生しやすい材料もあります。重いので、リフォームで採用される場合は、補強が必要な場合もあるかと思います。天然の物なので、劣化の仕方を楽しめる方にはお勧めです。
玉砂利洗い出しのメリットデメリット
玉砂利が見えるのは高級感があってほのぼのし奇麗ですね。機能的にもごつごつした玉砂利が滑り止めの効果を発揮し、砂やゴミが多少上がってもあまり目立ちません。ひび割れもするのですが、それもあまり目立ちません。ただ、割れた場合モルタルのような、割れてもかっこいいというのが薄れる感じはあります。あと、砂利ははずれたりずれたりすることがあります。大きな砂利だと少し気になる方もいらっしゃるかと思います。
建主様の実例紹介:玄関モルタル仕上げのリアル
実例:モルタル土間のセカンドリビング
モルタル土間を床材に選定した空間。タイルでも石でもなくモルタル土間の方が良いと判断しました。
薪ストーブ、犬、寛ぐための椅子、奥に見えるのはキッチンスペース。割と広めですが、置くものや設置するものも多いパターンです。タイルや石の目地や質感が入ると少し空間がうるさく感じます。ここではモルタル土間が正解だと私たちは判断し、お客様も受け入れてくださいました。主役たちが際立つ良い空間です。
実例:モルタル土間は名脇役
我が家は、モルタル土間を採用しました。理由は主張しない材料であること、日本古来の三和土(たたき)仕上げも考えましたが、それよりも主張しない、モルタル土間はシンプルでチープな材料だなと思いました。玄関ドアを開けて、中に入るまで、土間に注目は、恐らく誰もしません。外には植木や草花、配達の人は郵便ポストや宅配ボックスをめがけてやってきます。中に入れば、金魚鉢のビオトープ、ピアノ、無垢の床材など注目されるポイントは他にあります。モルタル土間ではなくてもなんでも良いと言えば、何でもいいのですが、そっけなくてそれでいて、職人の温もりがある、良い材料だなと思っての採用です。引いてみるとひび割れ、シミも模様です。気にならないです。
まとめ
手作りのお家です。3Dプリンターで出来るお家も出来てきていますが、まだまだ手作りのお家です。材料や仕上げは劣化します。私たちは劣化の仕方が好きな材料を使うようにしています。新建材は費用的に使わざるを得ない場合が多いですが、費用的にそう負担にならない部分はなるべく、本物の材料で劣化がきれいな材料の方が良いと思ってます。ひび割れ、安っぽいとかだけ見ると、物凄く不安になりますよね。言葉に惑わされず、本当に自分がその現象が、嫌いなのか好きなのかが分かると後悔しません。ただ、モルタルの割れが似合わないお家も多くあります。全体的な雰囲気がまず大事です。私はモルタルが好きな訳ではありません、造りたい玄関の雰囲気にモルタルがあってるだけです。こういったコラムやインスタグラムとかの部分的な切り抜きの写真や情報を繋ぎ合わせた家は、コンセプトのある良い家でしょうか?その判断が、お客様だけでは少し難しいですよね。自分たちにあったパートナー・設計士が必要ですね。あまりに考え方の違う方は、辞めた方が良いです。そのお家のコンセプトにあったベストな玄関床材をお選び頂けると後悔なく素敵なお家が出来ます。自分らしい、居心地の良い家を造れますように。長々おつきあい頂きありがとうございました。